アマゾン第2本社、「拍子抜け」結末が示す米経済の断裂

 ネット通販の世界最大手、米アマゾン(本社・シアトル)の「第2本社」探しが決着した。200以上の都市を巻き込んだ大狂騒曲の末、選ばれたのはニューヨークと首都ワシントン郊外の2カ所。「拍子抜け」ともいえる結末は、米経済に横たわる断裂の深さを示している。 「新本社はニューヨーク・クイーンズ地区と、バージニア州アーリントンの2カ所」 アマゾンが発表した13日、ニューヨーク市のデブラシオ市長は、普段はいがみ合うニューヨーク州のクオモ知事と笑顔で席を並べた。 「市と州の歴史のなかで、際立って大きな雇用につながる取引だ」 新本社が来る2カ所には、平均年収15万ドル(約1700万円)を超える計5万人以上の働き口と、合わせて50億ドルの投資が新たにもたらされる。 同社が昨年9月、本社の立地を「公募」するや否や、カナダ、メキシコを含む計238都市・地域が名乗りを上げた。 米経済の牽引(けんいん)役になったハイテク産業が、人員や施設を集積させるシリコンバレーやシアトル、ニューヨーク、ボストンなどが、米国の「勝ち組」巨大都市。一方、内陸部の都市の多くは主力の製造業が寂れ、置き去りになっている。アマゾン誘致は一発逆転で生まれ変われる好機だった。 誘致合戦は過熱し、税免除などで70億ドルの優遇策を示した都市も。今年初めに発表された20カ所の候補地には、ペンシルベニア州ピッツバーグやオハイオ州コロンバス、インディアナ州インディアナポリスなど中西部のラストベルト(寂れた工業地帯)も含まれた。 「家賃、医療、生活費が安いのが強み」。ピッツバーグのペドゥート市長は、人件費や土地代が高い巨大都市との違いを懸命にアピールした。しかし、結局は「世界クラスの人材を引きつけられる」(ジェフ・ベゾス最高経営責任者〈CEO〉)という理由で、米国を代表する2都市が選ばれた。 便利な交通機関に最高レベルの大学、民族的な多様性、豊富な娯楽――。多様で優秀な人材を確保するには、コストが高かろうが、そんな特徴を併せ持つ巨大都市を選ぶ。巨大IT企業の、身もふたもない選択に多くの地方は一時の夢を見ただけだった。 ブルッキングス研究所によると、昨年まで7年間に米国で増えた雇用の半分近くが上位20都市で生み出された。富める巨大都市と地盤沈下する地方の分裂は、深まる一方だ。 ただ、アマゾン新本社を射止めた両地域も、その内部には別の断層を抱えている。 「家賃が上がり、住民が追い出される」「史上最も裕福なベゾス(CEO)に渡す数十億ドルもの優遇策は本来、学校や地下鉄に使われるべきお金だ」 発表翌日の14日、ニューヨーク・マンハッタンから川一本隔てたクイーンズのロングアイランドシティー地区では、第2本社が予定される場所の近くに、地元選出の州・市議会議員や労組幹部、地元住民100人ほどが集まった。寒風吹きすさぶ中、1時間近く抗議を続けた。 念頭にあるのはアマゾンの本拠地、シアトルの経験だ。アマゾンの急成長に伴って高給の専門職が増え都市は活気づいたが、家賃の高騰でホームレスが増え、交通渋滞もひどくなった。 移民や労働者の町として知られたクイーンズも今や、倉庫や町工場が集まる一帯に高層マンションが建ち始めている。アマゾン新本社が来れば、さらに開発が加速する。 「労働者を追い出すことは、コミュニティーの改善ではない」。11月初めの中間選挙で連邦下院議員に地元から初当選したアレクサンドリア・オカシオコルテス氏(29、民主党)は、アマゾン誘致に疑問を投げかけた。(ニューヨーク=江渕崇)